昨年12月頃だったでしょうか、大学のある授業(チェコ史をご専門にされている、東京外大の篠原琢先生の講義です)で、「ユダヤ人は諸民族の接着剤である」という言葉を耳にしました。篠原先生は数年前からユダヤに関心を持っておられるようで、1コマにつき1回はユダヤ人に関連づけてお話をしてくださり、わたしにとっては非常に願ったりかなったりな授業なのです。
ユダヤ人は流浪の民ともいわれるように、世界中に離散して生活をしていました。それゆえ、「ユダヤ人はどこの場所でも根をはり、生活していける」というところから、「ユダヤ人は諸民族の接着剤である」という言葉が生まれたのです。
授業では近代のプラハが例に挙がりました。(当時の時代背景は割愛させていただきます)当時のプラハはドイツ語とチェコ語は並立して存在していました。学校、新聞、ラジオ放送、出版、劇場…あらゆるものが二言語化していたのです。
劇場を例にとってみましょう。ドイツ語側では、チェコ語圏でやっていること、起こった出来事は報道しませんでした。場合によっては積極的に無視していたようです。逆にチェコ語側では、ドイツ語側のことは積極的に報道していたようです。しかし他言語を介して情報提供するということは、そこに何らかの操作が加わってもおかしくありません。いずれにしろ、当時のプラハ内には「ドイツ語側の事実」と「チェコ語側の事実」が混在している状態でした。つまり、1つの国の中で事実が二分化されていたのです。
そこで注目されたのがユダヤ人でした。プラハ内にもアシュケナジー系のユダヤ人が大勢居住していました。彼らはドイツ語もチェコ語も使用していたようです。つまり両者と関わりを持てる存在で、情報も双方から得られていたのです。そういうことができると何かと利益があることは容易に想像がつきます。
話は変わりますが、現在イスラエルのメディアは多数の言語で放送されています。世界のマスメディアを握っているといわれるユダヤ資本ですが、一般的なユダヤ人にとってもイスラエルや中東世界で起きる出来事は非常に重要です。
彼らは一時間ごとにラジオのニュースを聞き、夜はテレビのニュースを見、一紙あるいはそれ以上の新聞を読むことが重要な日課とされているようです。
「コール・イスラエル」というラジオ局と、国営テレビ内ラジオ局では、演芸、ポピュラー音楽、パネルディスカッション、クラシック音楽などが17ヵ国語で放送されます。また国営テレビでは、朝6時から深夜1時までヘブライ語、アラビア語、英語で教育、情報番組が放送されています。
ちなみにメディアで使用されている言語は、公用語のヘブライ語とアラビア語のほか、イーディッシュ語、スペイン語、英、独、仏、露など実にさまざまですが、80年代末にロシアからの移民が増えたため、ロシア語の使用頻度が高くなっているようです。
今回は近代と現代の話題を取り上げましが、二ヶ国語以上を習得し活かす能力に関してユダヤ人は秀でているのではないかという点で、非常に興味深いテーマだと考えています。
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