イスラエル渡航者ログ:No.2 木下千尋さん

メンバーコラム


【木下千尋 -Chihiro Kinoshita】

1978年生 33歳

ー 教会スタッフ

Profile:

沖縄県久米島出身

桜美林大学国際学部卒業

2001年〜2004年イスラエル聖書大学、ヘブライ大学に留学

現在は国分寺にある教会、Jesus Communityのスタッフを勤める。

「イスラエルは住んでみないと分からない」

木下さんが働いている教会『Jesus Community』のHP

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▶卒論がきっかけで…

小林:木下さん、よろしくお願いします。イスラエルに4年間留学されていたということで、住んでみなければ分からない詳しい話も聞けたら嬉しいです。まず、なぜイスラエルに興味を持ったのか教えてください。

木 下:僕は、大学3年生の時にイエスキリストを信じてクリスチャンになりました。そこで、自分の卒論のテーマとして、メシアニックジュー(イエスを救い主と 認めるユダヤ人)のについて調べたりして。ユダヤ人として、イエスを信じている彼らのアイデンティティーはどうなっているんだろうと知りたくなって。それ がきっかけで、イスラエルにもっと興味を持ったんですよね。

小林:そうなんですか。卒論にメシアニックジューについて書くなんて、すごく珍しいんじゃないですか?

木 下:そう。すごく珍しかった。それも留学のきっかけだったんだけどね、3年生っていうと、卒論だけじゃなくて、就職活動も始めるでしょ? そこで、就活してる友達を見たりして思ったんだけど、このまま自分がメシアニックジューについて日本で一番詳しくなって、一番すごい論文が書けたとしても、どこの企業でも使ってくれないなって(笑)。

小林:確かに(笑)。

木下:使ってくれないなら、じゃあ院に行けばいいじゃん、って。それでイスラエルに留学する選択肢ができたんだよね。

         イスラエルで初めて独立記念日を祝った日

▶イスラエルの学長との出会い

小林:留学の前にイスラエルには行ったんですか?

木下:行ったよ。大学4年生になる前の春休みが初めてかな。1週間ぐらい。そこで、なにか出会いがあるはずだ、新しい発見があるはずだとか期待して行ったんだけどね、結局最終日まで何にもなかった(笑)。

小林:そうなんですか(笑)。ということは最終日は何かあったんですか?

木 下:そう。最終日に、感謝晩餐会みたいなものがあって、そこにイスラエル聖書大学(Israel College of the Bible)の学長さんがゲストで来ていて。その方と色々話しているうちに、じゃあうちに来なよ、って誘われて。それでまずイスラエル聖書大学に行こうと 思ったんだよね。

小林:最後に素敵な出会いがあってよかったですね。入学試験とかはあったんですか?

木下:あったよ。学長にうちに来なよって、誘われたから、てっきりそういうのは免除されると思ったんだけど(笑)。TOEFLとか、英語で志望理由書を書かされたりしたよ。

小林:イスラエル聖書大学の後、ヘブライ大学にも行かれていたんですよね?

木下:そう。最初1年間はイスラエル聖書大学、残りの3年間はヘブライ大学で学んでいました。ヘブライ大学では、宗教学を専攻していたよ。ユダヤ教とキリスト教を比較したり、ウルパンっていうヘブライ語の授業もあって、ヘブライ語を学んだりしていたよ。

   ヘブライ大学の語学授業(ウルパン)

▶死の瀬戸際で

小林:僕はよくイスラエルに留学するって言うと、危ないんじゃないかとか、死ぬなよとか言われるんですが、実際4年間住んでみてどうですか?

木下:全然危なくないよ。今は特にね。でも、僕がいた2001年はヤバかった。

小林:2001年というと…?

木下:ほら、9.11があって。その時はさすがにちょっとピリピリした雰囲気だった。エルサレムで毎日のように自爆テロがあってね。僕の住んでいた所の半径1km内でもしょっちゅう自爆テロがあったよ。

小林:じ、自爆テロがしょっちゅうあったんですか?!大丈夫だったんですか?

木下:僕自身は大丈夫だったけど、それでもギリギリの体験をした。ある時、家にいるはずの友達の姿が見えなくて。歩いて探しに行ったんだよね。

小林: えぇっ?!それは危ない…。

木 下:そう。本当は一番やっちゃいけないことなんだけど、どうしても彼を探しにいかなくちゃっていう衝動にかられて。外を一時間くらい歩いて探しにいったんだよね。その時に、自爆テロがあったすぐそばの路地で、ユダヤ人の女の子が恐怖のあまりに、放心状態みたいになって、動けなくなっちゃってて。そのとき、 丁度そばに救急隊の人がいたからその人に彼女をお願いして、僕はその路地を下りて右に曲がったんだ。で、2歩あるいたと思ったら、その瞬間、路地に停めてあった車が爆発して。すごい衝撃だった。そのとき右に曲がったから何ともなかったんだけど、まっすぐ行っても、左に曲がっていてもアウトだった。

小林:ひえぇ。 生と死の隣合わせの状況ですよね…。

木下:そう。そうこうしないうちに、第二次イラク戦争が始まってね。イスラエルにいる留学生も含めてみんなにガスマスクが配られて。一週間くらいは厳戒令が出されて、そのガスマスクを携帯しなきゃいけなくて、肩からそのマスクを下げて登校してたりしたよ。

小林:そこまで深刻な状況になって、帰ろうとは思わなかったんですか?

木下:それは全く思わなかったね。不思議だけども。やっぱり神様に守られているっていう確信があったんだよね。

 
不審物を遠隔操作で調査、爆破するロボット

▶イスラエルは祭りも魅力

小林:大学を卒業して、すぐにイスラエルに行かれたんですよね?

木下:そうだよ。大学を卒業して、その秋からかな。

小林:イスラエルの大学って、何月はじまりなんですか?

木下:まぁ9月あたりなんだけど、イスラエルは太陰暦を使うから、ずれるんだよね。建国記念日とかも、毎年変わったりするんだよ(笑)。

小林:そうなんですか?!それじゃあ、毎年ずれて、留学が微妙なタイミングとかになったりはしないんですか?

木下:そこまではずれないよ。みんなその暦で農業とかもするわけだし、閏月があって、そこで季節との帳尻を合わせるわけ。聖書にも書いてあるけど、最後の月がアダルの月っていって、閏月が第二アダルの月。けっこう頻繁にあるんだよ。

小林:そうなんですか。ユダヤ教のお祭りを色々体験してみたいです。その時期も調べておく必要もありそうですね。

木下:そうだね。特にエルサレムにはお祭りがある度に行くといいよ。

小林:どんなお祭りがあるんですか?

木 下:色々あるけど、特に仮庵(かりいお:仮の住まいという意味)の祭りの時はすごいよ。ユダヤの新年があって、大贖罪日があって、そして仮庵の祭り(スコット)。仮庵の祭りは基本的にお祭りって感じで、国内外から大勢の人がエルサレムに集まる。家の前に仮庵を作って、そこで料理をしたり。レストランなんかも、外に仮庵を作ってそこで食べれたりするんだよ。仮庵をつくるときは、そこから最低、星が3つ見えないといけないっていう面白いルールもあるんだ。

小林:へぇー。面白そうですね。早くイスラエルに行ってそういうことを体験したいです。

 

   仮庵の祭りのパレード。イスラエル国内外から集まってパレードするのが恒例になっている。

▶イスラエルから帰ってきて

小林:イスラエルから帰ってきて、どうされていたんですか?

木下:本当は、アメリカの神学校に行って、それまで自分が学んでいた事をまとめたいと思っていたんだけどね。経済的な理由とか色々あって、まず働きはじめたんだ。それが、自分にぴったりの仕事でね。すぐにチームリーダーみたいになってすごく仕事が充実してきて、同時にすごく忙しくなったんだ。

小林:すぐにまとめ役になったんですか。きっとすごく自分に合った仕事だったんですね。

木下:そう。実は、元々は商社マンになりたかったんだよね(笑)。今でも覚えてるんだけど、中学校の文集で、将来の夢に、「おい、木下、来週シンガポールに飛んでくれ」って言われるような仕事がしたいって書いた(笑)。

小林:それは、すごく具体的な夢ですね(笑)。

木 下:でしょ?(笑)。でも、その中で本当に神様の為に働きたいって気持ちが沸き上がってきて。そんな時に、ブリッジス・フォー・ピースっていう、ユダヤ人をサポートする団体で 働き手を募集しているのを知って、その時の仕事を辞めてその団体の活動を始めたんだ。でも実際、ブリッジス・フォー・ピースで働いている中で、イスラエル に行ったり、北海道から沖縄まで飛んだり、そういう仕事ができたんだけどね。今はその仕事を辞めて、近い将来、生まれ故郷の久米島に帰って教会を建て上げるために、ミニストリーを学ばせてもらっているんだ。

小林:いいですね!イスラエルで学んだことも活かされて、きっといい働きができると思います。

   エルサレムの夜景

▶イスラエルは実際に住まないと分からない

小林:イスラエルは、イメージとは裏腹にすごく近代的と聞いたことがあるのですが。実際住んでみてどうですか?

木下:確かに、テルアビブなんかは本当に都会って感じだね。いろいろな人やお店もあるし。エルサレムなんかとは、全然違った雰囲気かもしれない。

小林:道路なども、すっごく広くてキレイと聞いたのですが。

木下:本当インフラはすっごく整備されているよ。他にやることないのか、ってくらい(笑)。まぁ中東戦争のときに、エルサレムが孤立してしまったってことも背景にはあるんだろうけど、それにしてもすごい。

小林:そうなんですか。他にも、安息日にお店が閉まったりとか色々聞くんですが、それはどうしていましたか?

木下:確かに、黒い帽子をかぶったりしている、超正統派のユダヤ人たちは、しっかり安息日(シャバット)を守っていて、仕事は一切しないよね。ただ、そういう人たちばかりじゃない。僕がいた頃は、だいたい20~25%の人達が正統派のユダヤ教徒で、残りは普通の人達で、普通に安息日でも開いているスーパーやお店もあるし、日本の休日のように遊んでいる人達もいるよ。エルサレムは割とまだ伝統が残っているけど、テルアビブやハイファのような町は結構、近代化、世俗化している感じがするよね。

小林:そうなんですか。それはちょっと意外です。

木下:地域や人によってもその辺の考え方は全然ちがうし、何よりイスラエルは、実際に住んでみないと分からないことも多いよ。ひとつの国だし、良いところも悪いところもある。理解できるところも、そうじゃないところもね。

小林:そうですね。実際に住んで、体験して、色々なことを学んできたいと思います。今日はありがとうございました!

 

入隊したばかりのイスラエル兵。イスラエルでは兵役が男女とも義務。18歳から男性は3年間、女性は2年間。

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